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フーケの声を聞いても、自分の方に歩いて来るゴーレムを見ても、ルイズは動く事が出来なかった。 『ディアボロが自分を庇って死んだ』その事実が体から気力を奪い取っている。 今のルイズの頭に浮かんでいるのはディアボロと過ごした日々。 我侭ばっかりだった自分に怒りもせず、何で一緒に居てくれたんだろう? そう思った瞬間 ルイズは立ち上がり『破壊の杖』の代わりに己の杖を抜く。 呪文を唱え、魔力を込め、自分が出きる唯一の魔法を解き放つ。 解き放たれた爆発がゴーレムの鉄の足を襲った、しかし、傷一つ罅一つ入らない。 それでも、ルイズは止まらずに魔法を放ち続ける。 「小虫が足掻くわねぇ」 無駄な努力をするルイズを嘲笑うフーケ。 絶体絶命なルイズ。 その瞬間 「考え方を変えて使え…と言った筈だがな…」 静かな声が響き剣閃が、ゴーレムの足に走った。 今まさに歩き出そうとしていた所に決まる、完全に完璧な不意打ち。 「え!?」 無様に転倒するゴーレムと肩から落下するフーケ。 受身を取りながら、攻撃を受けた個所を見ると――― 信じられない者が居た。陥没した地面から普通に立ちあがっているディアボロが居た。 相変わらず、腕や足からは骨が飛び出し、腹からは内臓が駄々漏れ、人間の原型を留めているのが不思議な姿 なのに。 「そんなに驚いた顔をしてどうしたんだ・・・・・・え?フーケ」 声は全く平静で、負傷など感じていないかのような足取り その場に居た誰もが一生忘れないだろう悪夢じみた光景。 「馬、鹿な!?」 あの状態で人間が生きていられるはずが無い、ましてや動く事など不可能なはずだ。 だが、今現在ディアボロは動いている。 人生で始めて感じる未知の恐怖に、ゴーレムを動かす事も忘れてフーケの体が震え出す。 その隙を逃すディアボロでは無かった。 「フーケを捕まえるチャンスだぞ?」 ハッと気付いた時にはもう遅い。 傍らに立っていたルイズから魔法の爆発をくらって、フーケは吹き飛ばされ木の幹に激突して意識も吹っ飛ばされた。フーケ編完である! 「良くやったな」 気楽に喋るディアボロに走って来たルイズ 「そんな事言ってないで!速く学院に戻らなきゃ!」 痛々しげな目でディアボロの傷を見る。目からは涙が溢れている。 シルフィードから降りて来たキュルケとタバサもそれに続く。 「そんなに酷い傷では無い……フーケを縛り上げて戻るぞ」 煩げに手を振って答えるディアボロだが。 その言葉を無視する3人に抱え上げられて強引にシルフィードの背中に乗せられた 「学院に戻って」 タバサの命令にシルフィードが一鳴きすると、そのまま全速力で飛んで行く。 「相棒……大丈夫なのか?」 「心配いらんと言っているが……あいつ等も心配性な事だ。この世はアホだらけなのか?」 手足の骨がぶち折れて内臓がはみ出てるのに、平静すぎるデイアボロが異常なのだが。 それに突っ込みを入れる者や物はこの場には居なかった。 (ロードローラー並だったな……) シルフィードに揺られながらも、つらつらとそんな事を考えるディアボロ。 まあ、腹減りもヤバイ所まで来てたから早く戻れるなら良いだろうと考え直し。 (取り敢えずは、万が一に備えて応急処置だけはしておくか) エニグマの紙からフー・ファイターズのDISCを使用して傷を治す。 プランクトンで治る傷なのかと誰もが疑問に思うが、傷は治っているので問題は無かった。 ルイズ達の心配とは程遠い不死身ぶりを見せているディアボロであった。 学院に戻ってからディアボロは、きゅいきゅいと鳴いて煩いシルフィードを放って医務室に寄らずに厨房に直行した。 そんなディアボロに遅れる事数時間。 学院に戻ってきたルイズ達3人が見たのは、厨房で元気に食事をするディアボロの姿。 「ええ!?大丈夫なのディアボロ!?」 「問題は無い。と言っただろう」 厨房に着いた時には傷は自然治癒していたのである。 適当に答えて無傷の体を見せるディアボロ。 常人なら数ヶ月はベッドで昏睡状態のはずだが、医務室の治療が完璧だと思って強引にルイズ達は疑問を拭った。 そして、学院長室でオスマンが事の顛末を聞いていた。 「ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな……全く気付かなかったわい!」 「そうですな学園長」 お前等実は気付いてたんじゃね?との視線を物ともせずにオスマンはルイズ達を褒め出した。 フーケは衛士に引き渡され、破壊の杖は無事に宝物庫に収まり一件落着である。 そしてオスマンは、ルイズ達にシュヴァリエの爵位申請を宮廷に出した事を告げた。 「本当ですか?」 キュルケとルイズは喜びの声を上げた。が一瞬後ルイズの表情だけ固くなった。 「オールド・オスマン。ディアボロには何もないんですか?」 「貴族ではない平民の変態では、な」 平民はともかく、変態は関係無いと思う。 そんなこんなな感じで、ルイズとオスマンが話しているが、正直ディアボロにとっては如何でも良い事である 「……シュヴァリエとは何だ?」 取り敢えず、朝からシュヴァリエが何なのかを聞きたかったので、ここぞとばかりに質問してみる。 「知らないの?王室から与えられる爵位よ、最下級のものだけど。 シュヴァリエは他の爵位と違って、純粋な業績に対してのみ与えられる爵位だから 私達のような年齢で与えられるなんて驚きよ。」 無い胸を張って、そう誇らしげに語るルイズ。ディアボロも疑問が解けて満足気だ。 それを見ながら、オスマンは手を叩いた。 「さてと、今日の夜はフリッグの舞踏会じゃぞ? この通り『破壊の杖』も戻ってきて、予定通り執り行う事が出来て万々歳じゃよ。 今日の舞踏会の主役は君たちじゃ、用意をしてきたまえ。」 三人は一礼するとドアに向かった。だがディアボロだけ部屋から出て行こうとしない。 疑問の視線を向けるルイズに手を振ると。 「先に行け……私はちょっとした用がある」 ルイズの疑問はまだ解けていないようだが、取り敢えず頷いて部屋を出て行った。 「何か、私に聞きたい事がおありのようじゃな?」 「ガン…何とかとは何だ?」 そう問い掛けるディアボロの目の前で、いきなり明後日の方向を見て口笛を吹き出すオスマン。 あからさまに怪しい。 「ふん?まあ、良い……次の疑問だが。あの『破壊の杖』は何処で拾ったものだ?」 「……何でそんな事を聞くのじゃ?」 疑問文に疑問文で返すオスマンを見て、こめかみを引き攣らせるディアボロ。 「あれは私の元居た世界の武器だからだ……それが気になってな」 「『元居た世界』?……なるほど、それなら納得できるのう」 オスマンは溜め息をつくと、遠い目をして語り出した。 森を散策中にワイヴァーンに襲われた事。 そんなピンチのオスマンを『破壊の杖』を使って助けた男が居た事。 怪我をしていた男を学院に運び込んで治療したが死んでしまった事。 最後に残った一本を『破壊の杖』と名づけて宝物庫にしまい込んだ事。 そして、男がうわ言のように繰り返したのが『ここはどこだ。元の世界に帰りたい』だった事。 そこまで喋り終えてディアボロを見詰めるオスマン。 「きっと、彼は君と同じ世界から来たんじゃろうな……」 「…………」 「そして…おぬしの最初の疑問じゃが、そのルーン……」 「これがどうかしたのか?」 ディアボロが自分の左手にあるルーンをオスマンに向ける。 「それはガンダールヴの印じゃ……伝説の使い魔の印じゃよ」 「ガンダールヴ?」 「そうじゃ。その伝説の使い魔はありとあらゆる武器を使いこなしたそうじゃ。 曰く神の盾……もしくは……神の左手ガンダールヴという」 疑問が全部解けたので、そのまま学院長室から退出しようとするディアボロ。 ルイズが何故そんな伝説の使い魔として召喚できたのかは、如何でも良い疑問として片付ける。 ドアを開けようとした時、後ろからオスマンの声が聞こえた 「恩人の杖を取り戻してくれて……ありがとう……!改めて礼を言うぞ お主がどういう理屈で、こっちの世界にやって来たのか、わしなりに調べるつもりじゃ。じゃが……」 「?」 「何も解らなくても、恨まんでくれよ?なに、こっちの世界も住めば都じゃからな」 帰る手段はあり、帰る気も無い、そんなディアボロはオスマンの言葉を如何でも良い事として聞き流す。 彼にとっては理屈が解ろうが解らまいがどちらでも構わないのである。 <<前話 目次 次話>>
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概要 「使う」ことで消費し、特定の効果をもたらすアイテム。 吉良吉影・成長した吉良の特殊行動、吉良吉影のDISCの効果により爆弾化付与の対象に選ばれる。 消費アイテム一覧 アイテム名五十音 の順 アイテム名 買(売) 効果 備考 オレッちのコート 100(50) 使っても何も起きない持っていると、ヤク中のゴロツキの移動パターンが通常移動に変化する部屋内に置かれていると、その部屋で最後に出現したそれに乗るようにヤク中のゴロツキが移動する ヤク中のゴロツキが倒れると落とすことがある通常移動=ディアボロに接近し続ける移動パターン コピー人形の破片 100(50) 使っても何も起きない コピー人形が10ターン経過するか、倒れると必ず落とす シーザーのバンダナ 100(50) 混乱を付与する 鮮血のシャボンに入っている鮮血のシャボンを空にすると、次回鮮血のシャボンに遭遇した時に入っている敵・仲間にに投擲しても混乱は付与されない ゾンビ馬 1000(500) HPを全回復する 敵・仲間に投擲すると、対象の体力を全回復する ときのがくぼう 1000(500) 5ターンの間、時を止める 承太郎(3部)、承太郎(4部)が倒れると落とすことがある吸血鬼体質が付与されていると、10ターンの間時を止める ベルトのバックル 1500(750) 装備中のタスクact1のDISCがタスクact2のDISCに変化する付与された混乱が4ターン以上経過している時に持っていると混乱を解除する(0.16-12 The Run~) ヤバイものに入っていると効果が無い(0.16-12 The Run~) ポルポのライター 100(50) ディアボロの周囲1マスにブラック・サバスが1体出現する ブラック・サバスが倒れると落とすことがある地面にあるとエアロスミスやシアーハートアタックが群がる マフラー 10000(5000) 持っていると波紋痺れを無効化する使っても何も起きない 警備員の西戸の嘲笑による痺れは無効化できないストレイツォ、リサリサが倒れると落とすことがあるヤバイものに入っていると効果が無い やばいクスリ 10000(5000) HPを全回復し、混乱を付与する チョコラータの上半身が倒れると落とすことがあるヤク中の少年が倒れると必ず落とす敵・仲間に投擲すると、対象の体力全回復+混乱 石仮面 1500(750) 吸血鬼体質を付与する 吸血鬼体質の効果等の詳細は、「状態変化」ページの「吸血鬼体質」項目を参照波紋使いが付与されている時に使用すると、HPが1になり波紋の毒が付与される小汚い浮浪者に投擲すると、小汚い浮浪者(石仮面)に変化する 大家のカバン 3000(1500) 川尻浩作に盗まれたお金と同額が入っている お金を盗んだ川尻浩作か倒れると必ず落とすお金を盗んだ川尻浩作が聖なる弓矢を投擲されて成長した吉良に変化してから倒れると、このアイテムを落とさず盗んだ金額の下3桁の金額のお金を必ず落とす店での売買値に中身の金額は無関係のため、盗まれた金額が1499G以下なら使うより売った方が得になる 彼女の手首 100(50) 使っても何も起きない 稀にサンジェルマンの紙袋に入っている食料ではないため、サンジェルマンの紙袋から取り出すと戻すことができない 恐竜の化石 2000(1000) 一巡後の世界で持っていると、次のフロアが大部屋モンスターハウスになる一巡後の世界で使用すると、次のフロアが西戸ハウスになる 出典:魔少年ビーティー警備員の西戸が倒れると落とすことがある一巡後の世界以外では効果が無い使用後にボインゴのDISCを使用すると、効果が上書きされる 吉良の財布 2000(1000) 1000G単位で1000~5000Gをランダムで入手する 吉良吉影が倒れると落とすことがある爆弾化が付与されている 紫外線照射装置 2000(1000) 部屋内の全ての吸血鬼タイプ・柱の男タイプ(究極カーズを除く)の敵を消滅させる この効果で消滅させても経験値は獲得できない敵を何体以上か消滅させると、特殊メッセージが表示される 聖なる弓矢 1000(500) 装備中の全ての装備DISCの容量を1増加する 「ホテルの外」のダンジョンボスが倒れると必ず落とすレッドホットチリペッパー、吉良の親父、ブラック・サバスが倒れると落とすことがある装備DISCの容量はTrack8まで増加できる 赤石つき石仮面 2000(1000) 究極生物体質になる 究極生物体質の効果等の詳細は、「状態変化」ページの「究極生物体質」項目を参照レクイエムの大迷宮を持ち込み無しでクリアし、ハイスコア登録される(ランキング20位以内)と出現するようになる 鉄球 1000(500) 敵からの射撃ダメージを2/3に減少するタスクの威力が上昇する 投擲すると80ダメージ与えるクラフトワークの装備能力と効果が重複し、さらに射撃ダメージを減らせる 点滴 500(250) 満腹度を30回復する満腹時に使用すると、最大満腹度が1上昇する ハイウェイスターが倒れると落とすことがある食料ではないため、焦げず、サンジェルマンの紙袋には入らない 盗まれた財布 500(250) 玉美に奪われたお金が入っていることがある お金を奪った玉美が倒れると必ず落とす奪われたお金を取り戻せる確率は50% 魔法のランプ 1500(750) 下記の6つの願い事の中から、1つを選択するお金持ちになりたい:フロア内にお金が出現する満腹になりたい:満腹度を全回復する体力を回復させてくれ:HP・精神力を全回復、状態異常を解除する敵の動きを止めてくれ:ディアボロの周囲1マスの敵に固定を付与するアブドゥルを生き返らせてくれ:フロア内にアヴドゥル人形(稀にアヴドゥルさん)が出現する願いを増やしてくれ:HPが1になる HPが1で「願いを増やしてくれ」を選択すると死亡するヴェネチアホテル内で使うと何も起きない 無線機 2000(1000)(0.16-03、0.16-12 The Run)50000(25000)(0.16-10) ウェザーに繋がっている使うと雨が降る 落雷以外はウェザーリポートのDISCの発動と同じ効果フロア内の罠が見えるようになり、部屋のカエル/水系の敵/FFがパワーアップするバージョンによって買値・売値が異なる
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そんなこんなで、しばし後、四人は馬車に揺られながら、フーケの隠れ家に向かっている。 馬車の中には物凄い量の食べ物が置かれていて、ぶっちゃけ狭い。 残っているスペースに苦しそうな顔で座っているルイズ達。 「ミス・ロングビル…手綱なんて付き人にやらせればいいじゃないですか」 馬車内の重たげな空気を払拭するべく、手綱を取るロングビルにキュルケが話しかける 「いえ、私は貴族の名を無くしましたから……」 そう悲しげに呟くロングビルに驚いた顔をするキュルケ。 「ヘ?オールド・オスマンの秘書ではなかったのですか?」 「そうですが……彼は貴族や平民にはあまり拘らない方でして」 (……貴族は潰しが効かないから年がら年中ハロワ通いと聞いていたが…うまく再就職できたのか) 後ろで適当に聞いていたディアボロが更に適当極まりない思考をする。 レクイエムをくらった後、ずーっと住所不定無職だった男に言えた義理では無い。 「……オスマン氏には本当に感謝していますわ」 遠い目をするロングビル。秘書になるまでの苦難を思い出しているのだろうか? キュルケは爛々と目を光らせながらそれを見ている、ロングビルがオスマンの秘書になる前の事を聞きたがっているようだ。 「刺激されるわ…好奇心が刺激される!どうしても聞きたくなるじゃあないの!女は度胸!何でもためしてみるのさ きっといいきもちよ」 (差し支えなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ) 「キュルケ……本音と建前が逆になってるわよ」 「はっ!?」 そんな漫才をかましているキュルケとルイズを見ながら。 ある事を疑問に思ったディアボロはロングビルに尋ねてみた 「元貴族と言う事は……魔法が使えるんだな?」 「そうですが何か?」 「教えてくれないか?興味がある」 「土のラインクラスですよ」 (フーケは土のトライアングルメイジ以上だったな……) そんな事を考えながらも、ディアボロはルイズを見る。 「フーケの情報を持って来たのは誰だったんだ?」 「あんた話を聞いてなかったの!?ミス・ロングビルよ!」 「ふん?」 何かを思いついたディアボロだが、実行は後にして。 取り敢えず馬車に置かれた食べ物を一つ一秒で食べた。 ディアボロの早食いを知っているルイズやキュルケでも感嘆する程の早さだ。 タバサも珍しい事に目を見開いている。 「あ、相変わらず凄い早食いね」 「健啖な男の人ってセクシーよぉ」 深い森の中に入った馬車。薄暗く、何処からともなく、HPを反転させるお化けが出てきそうだ。 「フーケに気付かれないように、ここから先は徒歩で行きましょう」 そう提案して、ロングビルを含む全員が馬車から降りて道を歩いて行く。 そして途中まで進んだ時。 「悪いが……ちょっと馬車にデルフリンガーを置忘れた…取りに戻りたいのだが。」 そう言ったディアボロを見る四人。 確かに、腰にぶら下げていたデルフリンガーが何処にも見当たらない。 「ちょっとちょっと!今更、何言ってんのよ!フーケが目の前に居るかもしれないってのにそんな悠長な事が出来るはずないでしょ!?」 「そんなに時間はかからん……安心しろ」 怒鳴り付けようとしたルイズだが。 寸前で思い直して、限界まで落ち着くよう努力しながらディアボロに喋る。 「早く戻ってきなさいよ」 「すまんな……ああ、ロングビルだったな?お前も付いて来てくれないか?」 「「へっ?」」「えっ?」「…………?」 疑問を浮かべる四人、何で剣を取りに戻るのにロングビルが必要なんだと感じる (ま、まさか、私達が見てない事を良い事に、ミス・ロングビルに厭らしい事をするんじゃ!?) 「お前が何を考えているか知らんが……土くれのフーケは『土』のメイジだ。 もしかして、馬車への通り道で待ち伏せしているかもしれない。 私はお前達と違って、魔法に詳しく無くてな、対策法を知っている『土』のメイジが必要なのだ。 剣が無いと私は無能だからな」 妄想が爆発しているルイズに向かって手を振りながら答えるディアボロ。 ディアボロはDISCの事を喋っていない、それ故、素手でも強いが剣を持つと更に強くなる平民ぐらいとしか思われていない 一応もっともらしい事を喋るディアボロに納得の色を見せる四人。 「しょうがないわね!ミス・ロングビルすみません……ディアボロに着いてくれませんでしょうか?」 「ええ、良いですわよミス・ヴァリエール」 そのままフーケの小屋に向かって歩き出す三人とは、逆の道を辿るディアボロとロングビル。 馬車まで戻った瞬間。 「ああ、それでだがロングビル」 「はい?」 「ヘブンズドアーッ!」 振り向いたロングビルに線で出来た絵が直撃した。 そのまま顔がパラパラとした紙のような物になって地面に倒れる。 「なになに?」 地面に倒れたロングビルの顔の紙に書かれた文字を読むディアボロ。 【ロングビル】 体力:** 攻撃力:* 防御力:** 経験値:*** アイテム所持率:****** タイプ:人間 元貴族 秘書 能力 『土』のトライアングルメイジだぞ 実は土くれのフーケだぞ 「やはり、土くれのフーケだったか」 殺害を一瞬考えたディアボロだが、すぐにそれを考え直す。 (ヘブンズドアーDISCの事をバラすのも問題だしな…… それに土くれのフーケ自身が隠れ家の場所を教えたのにも興味がある) 取り敢えずディアボロはエニグマの紙からデルフリンガーを取り出した。 紙から出てくる長剣……メルヘンやファンタジーだ。 「よし。」 そのまま倒れているロングビル――フーケの紙に何かを付け加える 「『今起こったことはすべて忘れる』…と。」 「すまんな、少し遅れた」 「もう!遅いわよ!」 「それでだが……あれがフーケの隠れ家か?」 ルイズ達が見張っている一軒の廃屋を指差す 「はい。フーケはあの中に居るようです」 フーケ自身がヌケサクに答えた。事情を知っているディアボロから見れば滑稽極まりない (ふむ……どうする?) これは明らかに罠である。 このままロングビルの指示に従って行動したら、自分はともかくルイズ達が危ない、が。 まあ、このままフーケの指示に従うのも一興と考えたディアボロ。 (危険が迫ったらその時に考えれば良いな) 一巡後の世界に行こうとした人間とは思えないほど、行き当たりばったりであった。 <<前話 目次 次話>>
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「エア・ハンマー」 「ファイヤーボール!」 ディアボロを踏み潰そうとしたゴーレムの足に風の槌が直撃した! 続いた火球がゴーレムの頭に当る。 だが、効果は薄い……と言うか殆ど効いてない。 しかし、その事によりゴーレムは少しバランスを崩してよろけてしまい、フーケがゴーレムの陰に隠れてしまった。 「!?」 ザ・ハンドのDISC発動による引き寄せは、標的との間に障害物があると効果が無い。 つまり使用しても+修正が一つ減るだけで無意味って事である。 このエアハンマーとファイヤーボールを使ったのは誰だー!?と言わんばかりに飛んで来たほうを見るディアボロ。 「ディアボロ大丈夫!?」 視線の先、飛んできたドラゴンの上に乗っているキュルケが叫んだ。 「余計な事を!」 「早く逃げるぞ相棒!逃げろ逃げろ!」 起きた事はしょうがないとして、、ルイズを捜そうと周囲を見回すディアボロ。 すると意外な事に、ルイズは何時の間にかゴーレムの横に走っていた。 (何をする気だ?) ルイズや自分の安全よりも、ルイズが何をするのかに興味が湧いたディアボロ。 取り敢えず、キュルケの叫びを無視してそのまま見守る事とする。すぐ目の前にゴーレムが居るのに余裕である。 ディアボロの視線の先ではルイズがゴーレムに向かってひたすら『破壊の杖』を振っている。 どうやらルイズは『破壊の杖』を使ってゴーレムを倒す気らしい。 (あれはメイジの杖では無いのだが) 大いなる勘違いを見たディアボロは軽い頭痛がした。 そのディアボロの視線の向きにフーケが気づいたのか、ゴーレムが振り向いて、破壊の杖を強奪しようとルイズに手を伸ばす。 それを見たタバサとキュルケは、唱えた魔法がフーケに届くより、ゴーレムの腕がルイズを殴る方が早いと分かってしまった。 「・・・・・・しょうがない」 キュルケの悲痛な叫びを聞きながらも、ディアボロは溜息を一つしてDISCを発動した (ザ・ハンドのDISC発動!) その一瞬、ディアボロの体から、もう一本の腕が浮き出て、ガオン!と言う効果音がつかんばかりに前方を薙いだ! すると!驚くべき事に! 『空間をけずるとる!……するとお~~~~っ!』 「!?」 『破壊の杖』を抱えたルイズがディアボロの目の前にいきなり現れた! 何も無い所で腕を空振りするゴーレム。 「【瞬間移動】だな」 微妙に混乱しているルイズを見ながら涼しい顔をするディアボロ。 「あ、あれ!?何で!?」 「慌てるのは後にしろ。今は逃げるぞ」 「逃げるなんて嫌よ!」 ルイズの口から予想外すぎる言葉が出た。 「ふん?」 訝しげにルイズを見るディアボロに答える。 「フーケを捕まえれば誰も私の事を『ゼロ』とは馬鹿にしなくなるんだからッ! ここで逃げたら私はずっと『ゼロのルイズ』のままなのよ!?」 努力が認められずに散々馬鹿にされ続けた記憶を思い出して悲痛に叫ぶルイズ。 「なるほど・・・・・・」 静かな目をルイズに向けるディアボロ。 馬鹿にされたと感じて顔を赤くするルイズを見詰めながらもゆっくり思い出す。 かつて帝王だった時の自分の言葉。 『これは「試練」だ。過去に打ち勝てという「試練」とオレは受けとった。 人の成長は……………未熟な過去に打ち勝つことだとな… え?おまえもそうだろう?』 (やはり、私が召喚されるのも必然だな) ・・・・・・如何でもいいが、目と鼻の先にゴーレムが居ると言うのにゴチャゴチャ話し合うとは大した奴等である。まさか・・・・・・これほどとは。でもあった。 と言うか、今まさに、ゴーレムが足で踏み潰そうとしているのに気付いたディアボロとルイズ 頼みの綱のキュルケとタバサはゴーレムの振る腕が邪魔して近寄る事が出来ない。 「これには背を向けないと死ぬと思うが?」 死の鉄槌が振り下ろされようとしても冷静なディアボロ。死に慣れている彼には屁でもないのだろう。 「敵に後ろを見せない者を貴族と呼ぶのよ!……そして、私は貴族なの!」 自分の一振りに『破壊の杖』は応える。そう信じて逃げる事無く、再度破壊の杖を振り下ろすルイズ。 だが、現実は無情!何も起こらなかった! ドラクエで復活の呪文が違いますと言われるような物である。 目の前には振り下ろされるゴーレムの鉄となった足、ルイズは死を覚悟した。 今までの人生が走馬灯となって流れる寸前、苦笑するような場違いな声が聞こえ―――― 「世話の掛かる奴だ」 ルイズの背中にドヒュンと言う文字が張り付いた瞬間 ドヒュ――z__ン! 「キャァァァァァァァァ!」 悲鳴を上げて数十メイル以上吹っ飛ばされるルイズ。 『破壊の杖』だけは手放すまいと抱きしめているのだけは流石な部分である。 そのまま、木にぶつかって5の固定ダメージを受けた。 「ケホッケホッ」 少女にとっては決して軽くない衝撃に咳き込みながらも、前を向こうとした時 ズシン! 大きな音が大地を揺らし、森の木々が揺れた。 「ディ、ディアボロ?」 ルイズの視線の先で、鉄に錬金されたゴーレムの足が上げられた。 陥没した地面の中にはディアボロが居た。 腕や足からは骨が飛び出し、腹からは内臓が駄々漏れ、人間の原型を留めているのが不思議な姿。馬車に轢かれた蛙よりも酷い ディアボロの今の姿を客観的に生きていると言うならば、辞書に載っている死人の定義を書き直さなければならないだろう ディアボロが死んだ……。 その事実がルイズの頭にオラァ!とばかりに叩きこまれた 上空からそれを見ていたキュルケ達も愕然としていた。 ルイズを吹き飛ばしたディアボロがゴーレムの足に踏み潰されたのを。 ゴーレムが足をどけた後からは、潰れた人間の姿。 「ま、まさか……」 「……あれでは、例え…生きていたとしても……」 そして―― そんなディアボロの姿を嬉しそうに見るフーケ 「死因リストに、フーケのゴーレムに踏み潰されて死亡が追加ね♪」 そんな事を口走りながらも 邪悪に微笑えんで、茫然自失したルイズに振り向く。 「ウフフフ……後は小煩い虫を潰すだけね」 <<前話 目次 次話>>
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古明地こいし&ディアボロ◆DIOmGZNoiw 考えごとをしながら部屋の片付けを続けていたら、いつの間にか終わっていた。自分自身がきちんと片付けを終わらせたという実感はなかったが、しかし、部屋に散らばっていた衣類や小物はすべて所定の位置へと収納されている。部屋は誰がどう見ても、整然と片付いている状態であった。 ひとつひとつの作業を取り立てて意識することもなく、なんとなく続けていたという認識は、我ながらあった。ならば無意識のうちに掃除を終わらせたのだろうかと思わないでもないが、それにしたって早過ぎる。片付けをはじめてから、まだ一時間も経過していない。この短時間で部屋の片付けをすべて終わらせたとは、考えにくい。 「なあ、アーチャー。俺って今、なにしてたっけ」 「はて。部屋の片付けをしていたはずでは」 弓兵が背後に姿を現した。平時は魔力消費を抑えるために、霊体化させている。 「いや。それが、もう終わってるんだけど」 「はあ。ならばそれは、マスターが終わらせたということでは」 此方の発言の意図が読み取れず、弓兵は眉をひそめる。困惑の様子はありありと伝わってくる。 霊体化しながらも、ずっと傍でマスターの動向を眺めていたアーチャーがそう言うのであれば、本当に自分がひとりで、無意識のうちに掃除を終わらせたということなのだろう。どうにも釈然としない気持ちは心中にわだかまってはいるものの、考えても詮無いことだろうと、思考を中断した。軽く買い物にでも出掛けようと思い、テーブルに放置していたスマートフォンに手を伸ばした時、スマートフォンは聞き覚えのない着信音を奏ではじめた。 ジリリリリ、と。高音で響く呼び鈴の音が、断続的に流れ続けている。随分と昔、携帯電話が普及するよりも以前に使用されていた、所謂『黒電話』と呼ばれるもののベル音だ。スマホに手を伸ばす。画面には非通知設定、と表示されていた。 「えっ……」 気味が悪い、というのが正直な感想だった。 まず第一に、黒電話のベル音を着信音に設定した覚えはない。見知ったスマホが、見知らぬ相手から着信を受けて、見知らぬ着信音を響かせている。こんな経験ははじめてだった。 はじめは無視していればそのうち切れるだろう、と思いもしたが、しかし、いくら待ってもベル音は鳴り止まない。コールが二分を越えたあたりから、次第に苛立ちが込み上げてきた。ちらとアーチャーに目配せして、液晶に表示されていた応答ボタンに人差し指で触れ、耳に当てる。 「私、メリーさん。今、お部屋の片付けを手伝っていたの」 冷たい湖面を思わせる、澄んだ少女の声だった。 声の意味を悟った瞬間、言い知れぬ気味の悪さに襲われた。服の中に直接冷水を流し込まれたような心地だった。背筋がぞっとして、背中から腕にかけてさっと鳥肌が立つ。徐々に鼓動が早まって、数秒後には不快な動悸に苛まれる。 スマホに目を向けるが、既に通話は切れていた。慌てて室内を見渡すが、この部屋には自分とアーチャーを除いて、他には誰もいない。サーヴァントであるアーチャーが認識していない時点で、ここに第三者がいるとは考えにくい。 「どうしました、マスター」 「い、いや……悪戯、かな」 「悪戯、ですか」 「ああ。いや、まあいいや。ちょっと出かけてくる」 「ふむ……ならば私もお供しましょう」 アーチャーの姿が、金の粒子を散らしながらかき消える。霊体となって、そばに寄り添うつもりだ。歴史に名を刻んだ英雄がそばに付いてくれるならば、不安も幾らかは薄れる。 憮然としながらもスマホと財布をポケットに押し込んで、玄関口へと向かった。外の空気でも吸って、早いうちに忘れてしまおうと思った。 鍵を手に取って、外に出る。既に胸の動悸は収まりつつあったが、しかし、あの少女の凛とした声は、未だに脳裏を離れない。とっとと考えを切り替えたいと願うものの、内心は穏やかではない。不気味さが、本能的な恐怖を掻き立てている。 「あれ」 部屋から出て、玄関を背にして、鍵をポケットにしまいこんだところで、言い知れぬ違和感に襲われた。自分が今、この瞬間、なにをしていたのかが思い出せなかった。 数歩引き返して、ドアノブをひねる。ドアは開かない。鍵は既に閉まっていた。 「俺、今、なにしてた」 「は。鍵を閉めていたのでは」 アーチャーにそう言われれば、そうだったような気がしないでもない。 無意識のうちに、鍵を閉めていたような、漠然とした認識はある。だが、確かな意識はそこにはない。不気味な電話と見知らぬ少女の声に気を取られてはいたものの、こうも記憶が抜け落ちるのは、奇妙だ。まるで時間が数秒飛んだような錯覚すらいだく。 ふいに、スマホが鳴った。 「うひぃぇァ!」 頓狂な声を上げて、その場で固まる。非通知からの着信。設定した覚えのない、黒電話のベル音だった。 二度目は待たなかった。胸に沸き起こる恐怖心を払拭するため、そして、ひとかけらの好奇心に突き動かされて、スマホの応答ボタンを押す。 「私、メリーさん。今、一緒に部屋を出たわ」 「おい、おまッ」 電話は既に途切れていた。ごく短い通話時間が、画面には表示されている。 周囲を見渡すが、マンションの廊下には、自分以外誰もいない。アーチャーですら、霊体化して不可視となっている。 どこかに自分を見張っているやつがいるはずだ、瞬時にそう思い至った。例えば、自分と同じ聖杯戦争の参加者が、虎視眈々と機会を見張りつつ、戦闘前に精神的な動揺を誘うために電話をかけてきている、という考えができないこともない。しかし、そうだとして、どこから。人が隠れられそうな視覚はない。或いは、アーチャーのように不可視の状態からことに及んでいる可能性もある。ともかく、ここにはいたくない。アーチャーを伴って、足早に歩き出した。 部屋を出た時点ではまだ、日が沈む直前だった。赤くなった西の空に背を向けて、極力人気のないところへと心掛けて移動する。時たま走りながら、後方に追跡者がいないかどうかを確認する。怪しい者はいない。だが、同時に、街ゆく人々の群れすべてが妖しく思えてくる。誰も信用できない。じりじりと沸いて起こる焦燥に追い立てられるように街を駆けて、スノーフィールドの外れの広場に到達する頃には、既に日は沈み切っていた。薄暗闇の中、この広場に自分以外に誰もいないことを確認する。 黒電話の音が、夜の静寂の中けたたましく鳴り響いた。 意を決して通話に応答する。 「私、メリーさん。今、あなたの後ろにいるの」 「アーチャー!」 霊体化していたアーチャーが、自らの宝具たる弓を携え、瞬時に姿を現した。 勢い良く後方へと振り返るが、誰もいない。夜の闇の中、そよ風に枝を揺らす木々の他に、取り立てて意識するべきものはない。だが、油断する気にはなれない。警戒心をむき出しにして、油断なく周囲に気を配る。ふと、スマホに目を向けると、まだ通話は繋がっていた。もう一度スマホを耳に当てる。 「おい、おまえ、なんのつもりでこんなことやってる」 電話口の少女は、なにも言わなかった。その代わり、スマホから、自分の声が反響して帰ってくる。相手側の受話器が、自分の声を拾っている。それだけ近くにいる、ということだ。 「どこから見て」 「私、メリーさん。今……あなたの目の前にいるの」 怒気すら孕んだ声を遮って、少女の冷たい嘲りが聞こえた。 目の前に、少女が立っていた。黄色のシャツに、緑のスカート。薄く緑色を含んだ銀髪をそよ風に靡かせて、少女は胸元の球体から管の伸びた電話の受話器を耳に当てて、笑っている。笑っているといっても、口元だけだ。大きく見開かれたまま瞬きすらしない瞳に、笑みは感じられない。その少女を認めた刹那、本能的な恐怖が全身を駆け抜けて、思わず後方へと距離を取った。 マスターの危機を察知したアーチャーが、瞬時に少女へと弓を向ける。 「あ、っ、アーチャー、そいつをやれ!」 恐怖に追い立てられるまま、極めて抽象的な命令を叫ぶ。 頼みの綱のアーチャーは、両の膝を地べたについた。胴に大穴を開けて、血をまき散らしている。 「え」 アーチャーは常に視界の中にいたが、アーチャーがやられる瞬間を意識することは出来なかった。 無意識のうちに。或いは、時間が飛んだかのように。マスターにすら認識されぬうちに、アーチャーは討たれていた。 「キング・クリムゾンッ……時間を五秒ほど消し飛ばした。貴様は……自らの敗北の瞬間にすら気づけない……すべては『無意識』のうちに終わったのだッ!」 全身のほとんどを真紅で塗り潰した怪人が、アーチャーの血液で濡れた血を振り払って、蛇のような瞳を向ける。額にもうひとつ顔がついている。その背後に、ほぼ包み隠さずに上半身を晒した男が立っていた。ピンク色の長い髪の毛には、ヒョウ柄を意識したのであろう緑のカラーが斑点状に、所々に入っている。 いったいいつの間にこの男に接近されたのかはわからない。なにが起こったのかもまるでわからない。ただ、自分が既に聖杯戦争に敗北していることだけは、なんとか理解できた。 ◆ 何度も何度もくだらない理由で死んでは蘇生し、自分の死が幾度目であるか、数えることすら億劫になりはじめた頃、ディアボロの目の前にひとりの少女が現れた。その直前は、マフィアの抗争に巻き込まれて、チンピラのような下っ端の銃弾に撃たれて死んだことは覚えている。今度は眼前の少女に殺されて終わるのだと、直感的に思った。 尻もちをついたまま後退る。街灯の灯りに群がる虫が、白熱灯の光に吸い寄せられて、ジジジ、と羽音を立てる。薄暗がりの中、少女は街灯の光の真下まで歩み出て、喜色満面の微笑みを見せた。その笑みが、ディアボロは恐ろしかった。 可能であれば、逃げ出したい。今度こそ、死の運命から逃れたい。新たな状況に落とし込まれるたびに、ディアボロは最低限抗ってはいた。今度こそ、という思いは、やはり、あった。 ディアボロは大きく首をひねって、逃走経路を確認する。今目前にいるのは少女ひとりで、往来に他の人間はいない。車の通りもない。街の喧騒は、随分と遠いところから微かに聞こえる程度だった。 逃げられるかもしれない、と。そう思った。 「あなたが私のサーヴァントね」 ディアボロの手を、少女が取っていた。 「――、なにィッ!?」 一瞬。ほんの一瞬、少女の存在を意識の外に置いた。それだけなのに、まるで時間が飛んだかのように、無意識のうちに少女はディアボロの手を取っていた。頭皮から、額から、一気に脂汗が滲み出る。冷たい風に冷まされた汗が頬を伝って流れ落ちてゆく。 時間が、飛んだ。或いは、完全なる『無意識』のうちに、手を取られていた。 ディアボロにとって、それは無視するにはあまりにも大きすぎる問題であった。 「小娘ッ、貴様! オレのそばに近寄るなああーーーーーーーーーッ!!」 ディアボロの身体から、真紅の分身――キング・クリムゾンが浮かび上がる。真紅のスタンドが、その豪腕を振り上げて、少女へと殴りかかる。少女は、歳相応の少女とは比べるべくもない跳躍力でもって大きく飛び退いた。 「はーい、ごめんなさい。だけどね、近寄ろうと意識して近寄ったわけじゃないわ。気付いたら近寄っていたの。無意識のうちにね」 少女の言葉の意味が理解できない。エピタフを発動しても、肝心の少女の行動は読めない。数秒先まで予知したところで、自分の死は訪れないことは理解したが、少女の行動だけは、どうにも意識のそとにあるようで、それを認識することができない。 この時点で異常だった。これまで繰り返した死の輪廻の中で、スタンドを発動できた試しなどない。そもそも未来予知などしたところで、すぐに死んでしまうのでは、予知するべき自分の未来がないのだから意味がない。 だが、今回は違う。少なくとも、すぐには死ぬことはない。それを理解し、急速に冷静さを取り戻す。 「名を名乗れ、小娘……貴様はいったい、なんなのだ」 「私の名前は古明地こいし。閉じた恋の瞳」 またたきをしたら、寸前まで目前にいた少女の姿はかき消えていた。 「もしもーし。今は、あなたの後ろにいまーす」 振り返れば、申告の通り、ディアボロの背後でこいしは笑っていた。 ほんの一瞬でも古明地こいしを意識の外に逃せば、なにをされるかわからない。エピタフでも、古明地こいしを意識的に捉えることは不可能だった。 古明地こいしに対して『意識』をすることが、上手くできない。それがこいしの能力なのであろうと、ディアボロは理解した。それはそれでいい。自分がすぐに死なないことも分かった。であれば、今更必要以上に焦ることはない。幾分冷静さを取り戻したディアボロは、鼻から一息に体内で淀んでいた息を吐き出して、こいしに向き合った。 「おい……古明地こいしといったな」 「はーい、そうでーす」 「貴様の目的はなんだ」 「目的っていう目的はないよ」 「ならばなぜ、このわたしに近づいた」 「あなた、メリーさんって知ってる?」 「なに」 ディアボロははじめ質問の意味を理解しかねて、眉をひそめた。 メリーさんという単語に、心当たりはない。そもそも、質問に対する返答とも思えなかった。そういう諸々の疑問を置き去りにして、こいしはひとり滔々と語り出す。 「ここの人たちってね、みんな携帯電話を持ってるみたい。幻想郷じゃ、そもそも携帯電話を持ってる人がいないから、だーれも怖がってくれないのよね」 それがことの経緯の説明であるとは思えない。ディアボロは少ないやりとりのうちに、こいしが時たま飛躍した返答をする少女であることを理解した。そういう相手に対して、いちいち真面目に返答を返していてはこちらが持たない。イカれたやつを数多く内包するパッショーネを率いていたディアボロだからこそ、それは分かる。 すでにこいしの事情に関して深く立ち入る気は失せていた。携帯電話も幻想郷もどうでもいいことだ。ディアボロは、断片的に理解できた情報から、わかる範囲で話を進める。 「人を怖がらせるのが……貴様の目的ということか」 「別にそういう訳でもないけど。でも、それはそれとして、聖杯戦争って勝ち残るといいことがあるんだって」 「聖杯戦争というのがなんなのか、イマイチよくわからんが……いいだろう。褒美があると考えていいのだな」 「うん。なんでも、願いが叶うらしいよ」 「ほう」 簡潔な説明ではあるが、その一言はディアボロの眼の色を変えるには十分だった。ディアボロの表情の移り変わりを察知したこいしは、にんまりと破顔した。 「うふふ。ねえ、ねえ。サーヴァントってね、大概なにか願いごとがあるから召喚されるのよ。ここに来たってことは、あなたにもなにか叶えたい願いがあるんでしょ。ないとは言わせないよ」 説明は不十分ではあるものの、少しずつ、ことの概要が輪郭を持ち始めていた。 まず大前提として、ディアボロには、サーヴァントとして呼ばれた覚えなどはない。繰り返す死の輪廻の中で、気付けばこの場所に辿り着いていただけだ。だけれども、この異常な状況が、聖杯戦争と呼ばれる催しによるイレギュラーであるなら。 「わたしの……願い」 そんなことは決まっている。 この状況に追い込まれて、望む願いなどひとつだ。 「もう一度、生きたいッ……そして、あの『絶頂』を取り戻したいッ!」 「えー、生きたいだなんて変な願いね。だってあなた、もう生きてるじゃない」 「違うッ……オレは何度も死を繰り返して来た! もううんざりだ……どうせ死ぬなら、やるだけやってやるのも悪くはないッ」 「ふーん、そうなんだあ。なんかあなた大変そうね。じゃあ、ここはひとつ、私のサーヴァントとして頑張ってみますぅ?」 こいしがディアボロの境遇を理解できたとはとても思えないが、しかし、それついてはさして興味もなさそうに、悪戯でも思いついた子供のように微笑んでいる。 「貴様……この『ディアボロ』を使おうというのか」 こいしは一瞬考えるような素振りを見せたが、実際のところは大してなにも考えてはいないのだろう。予定調和的に、こいしはにこりと相好を崩した。まるでディアボロに物怖じする様子はみられない。 パッショーネのボスであるこのディアボロが、こんな少女に使われる日がくるのか、という思いがまったくないといえば嘘になる。だが、どの道ディアボロが生還するためには、古明地こいしとともに戦っていくしかないのだ。いちいちディアボロを恐れない方が、面倒がなくていい、とも考えられる。 一瞬の逡巡はあったものの、ディアボロは体内に残留していたわだかまりをフン、と一息に吐き出した。 「いいだろう……ならばこの聖杯戦争が終わるまでは……この『ディアボロ』が、貴様のサーヴァントとして戦ってやる」 「はいはーい、そうこなくっちゃあ面白くないわね。じゃあ、メリーさんは私に任せて」 「それは勝手にしろ……勝てるならなんでもいい」 「ふふ、話は決まったね。それじゃ、これから力を合わせて一緒に頑張ってこー!」 右手を振り上げて、こいしは無邪気な笑みを見せた。これから運動会のかけっこにでも挑もうと意気込む子供くらいの心意気のように感じられたが、古明地こいしの能力の脅威と、ディアボロのスタンドとの親和性の高さについては、身を持って体感したのでよく理解している。 ――必ず、オレはあの『絶頂』を取り戻す。それまでは精々利用してやるぞ……古明地こいし。 隣で微笑む少女を、子供と侮ることはもうしない。この女は、戦争に勝ち残るための重要な駒――マスターだ。利用できるものはなんでも利用し尽くしてやる。その上で、必ず元の世界に戻り、あのジョルノ・ジョバァーナと仲間たちを始末する。そうすれば再びディアボロの天下はやってくる。 幾度となくディアボロを苦しめた死の運命は、今は鳴りを潜めている。少なくとも、ここにいるのはディアボロと、そのマスターだけだ。周囲には依然、ディアボロを殺す要素は確認できない。久々に得られた「生」の実感と、徐々に認識し始めた「生きている」ことへの安心感を噛みしめるように、ディアボロは深く息を吐いた。 【出展】ジョジョの奇妙な冒険 Parte5 黄金の風 【CLASS】ディアボロ 【真名】ディアボロ 【属性】混沌・悪 【ステータス】 筋力C 耐久E 敏捷C 魔力C+ 幸運D 宝具A 筋力A 耐久C 敏捷B 魔力C+ 幸運D 宝具A (宝具『真紅の帝王』のステータス) 【クラススキル】 気配遮断:B (EX) サーヴァントとしての気配を断つ。平時はB相当。 宝具発動中は、時間の流れそのものを認識させない。 単独行動:A マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力。 Aランクならば一週間は現界可能である。 単独顕現:A ディアボロは本来、どのような未来においても死亡することができず、永久に死亡し続ける運命を背負っている。そのため、ディアボロがまともな英霊として座から召喚されることはない。 度重なる死の運命の中、いつの間にかこのスキルを獲得したディアボロは「死んではいないが生きてもいない」という状況を逆手に取って、擬似的な英霊として召喚されている。故に聖杯戦争の知識も、サーヴァントとしての知識ももたない。 【保有スキル】 レクイエム:A 幾度となく繰り返される死の運命。致命傷を受けても、すぐに死ぬことは叶わない。かといって苦痛が和らぐこともない。 しかし、戦闘から離脱する能力には長けており、また、離脱不利な状況をリセットすることも出来る。同時にバッドステータスの幾つかを強制的に解除する。 要は「戦闘続行」と「仕切り直し」の複合スキルである。 情報抹消:A ディアボロは、自分の正体に至るあらゆる痕跡を抹消し続けてきた。 対戦が終了した瞬間に目撃者と対戦相手の記憶から、能力、真名、外見特徴などの情報が消失する。例え戦闘が白昼堂々でも効果は変わらない。これに対抗するには、現場に残った証拠から論理と分析により正体を導きださねばならない。 【宝具】 『真紅の帝王(キング・クリムゾン)』 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:- 破壊力-A スピード-A 射程距離-E 持続力-E 精密動作性-? 成長性-? 時を「消し飛ばす」能力を持った近距離パワー型スタンド。消された時間の中では全ての物がその間の動きを認識せず、記憶もできない。ディアボロだけが消した時間を理解し行動できる。他者からすれば、数秒未来へ時間が飛んだ、という認識となる。 時を飛ばしている間、ディアボロはこの時間に「存在していない」という扱いを受けるため、あらゆる攻撃・物体はディアボロをすり抜ける。同時に、ディアボロ自身も時飛ばしの最中に攻撃を仕掛けることはできない。恐るべきは、時飛ばし解除と同時に必殺の攻撃を仕掛け、時間が消し飛んだことに困惑する相手を仕留める戦闘スタイルである。 また、後述の宝具によって未来を予知し、それが自分にとってよくない未来であれば、その出来事が起こる瞬間に時飛ばしを発動することで、自分自身をその時間軸に「存在しなかった」ことにし、回避することも可能。 『墓碑銘(エピタフ)』 ランク:A 種別:対界宝具 レンジ:- 最大補足:- 数秒から数十秒先の未来を予知する能力。その精度は絶対的で、確定した運命を見通すエピタフによる未来予知が外れることはない。 また、時間が消し飛んだ世界でさらにエピタフを使い、自分の能力が発動した場合の未来をみることも出来る。 【人物背景】 ジョジョの奇妙な冒険 第5部におけるラスボス。 巨大ギャング組織「パッショーネ」の元・ボス。33歳。現在はジョルノ・ジョバァーナの『ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム』を受けたことで、「死んだ」という結果にすら辿り着けなくなり、永遠に続く死と再生を繰り返している。 性格は冷酷非常かつ用心深く慎重で、自身の情報は過去も含め一切外部に漏らさず、詮索しようとした者は誰であろうと容赦なく始末する。絶対的な支配力をもって、恐怖によって組織を纏めあげていた。 また、生前はドッピオという人格も有しており、二重人格で活動していたが、ジョルノたちとの戦闘によってドッピオは死亡。現在はディアボロひとりである。 【サーヴァントとしての願い】 生きたい。もう死ぬのは嫌だ。 生きて元の世界に帰り、帝王の絶頂を取り戻す。 【基本戦術、方針、運用法】 ディアボロの時を飛ばす能力と、古明地こいしの無意識を操る程度の能力。この二つをフルに活かして奇襲をかければ、敵対勢力はまず自分の身になにが起きたのかを知る前に『始末』されることであろう。戦闘になったところで、容易に離脱することは可能。非常にアサシンの特性に近いサーヴァントである。 ただし、ディアボロはまっとうな座から召喚されたわけではない。よって、聖杯戦争、及びサーヴァントに関する知識が欠落している。なので自分のクラスも分からない。分からないので仮に『ディアボロ(悪魔)』のクラスとしてこいしは認識している。当のこいし自身も、とくに聖杯戦争にかける願いがあるわけではなく、こいしにとって大切なのは「メリーさんの都市伝説でどこまで遊べるか」それだけである。 上記の通り、聖杯戦争という儀式においては非常にイレギュラーなコンビではあるが、狂化しているわけでも、考えなしというわけでもなく、主従ともに着実に敵を始末することのみに特化しているあたりたちが悪い。 【出展】東方Project(東方深秘録) 【マスター】古明地こいし 【参加方法】 覚えていない。無意識のうちにトランプを手に入れていた。 【人物背景】 本来は心を読む覚り妖怪。しかし、その力のせいで周りから嫌われることを恐れ、読心を司る第三の目を閉じて能力を封じた。心を読む能力は失ったが、代わりに「無意識を操る程度の能力」を手に入れた。この能力により、無意識で行動できるようになったこいしはあちこちをフラフラと放浪するだけの妖怪となってしまった。 上記の能力によって、他者がこいしを意識的に認識することは難しくなっている。しかし、他人との境界を確立していない子供はこの限りではなく、幼い子供たちの中にはこいしを慕うものも多い。幼い頃に遊んだ、素性もなにも分からないお姉ちゃん(イマジナリーフレンドとも)というと、古明地こいしの可能性がある。 東方深秘録では、自身が触れた都市伝説である「メリーさん」がどこまで通用するか興味を持ち、「メリーさん」にまつわる「今、貴方の後ろに居るの」というセリフを言ってみたいという想いもあって様々な人々を訪ねる。が、どういうわけか人々には「メリーさん」の恐怖をなかなか理解してもらえず、こいしは首を傾げることとなる。魔理沙からは『幻想郷の住人には電話というものがよく分からないだけだ』とたしなめられた。 【能力・技能】 無意識を司る能力。こいしの行動は、意識的に認識することは難しい。他者の読心能力もこいしには通用しない。 また、弾幕・格闘における戦闘能力もそれなり。 【マスターとしての願い】 聖杯戦争自体にはそれほど取り立てて強い興味はない。 携帯電話が普及しているこの世界で、メリーさんがどこまで通用するのか確かめたい。 【令呪】 左手の甲に、ディアボロのタトゥーに似た令呪が三画。
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桃色サバス 作画 中津賢也? 掲載誌 ヤングキング?1992年~1997年連載 話数 全?話 あらすじ 魔神ベルゼビュートの魂を持って生まれた高校生・魔道玉吉と、魔界からの刺客としてやってきたが、玉吉の純情さにほだされてボディーガードをすることになった魔女・カゴメとのドタバタラブコメ。 単行本 レーベル名 出版社 判型 巻数 奥付 Amazon YKコミックス 少年画報社 B6 全12巻 1巻・1992年初版、12巻・1997年初版 桃色サバス [少年向け:コミックセット] 少年画報社文庫 少年画報社 文庫 全7巻 2002年初版 桃色サバス 全7巻完結(文庫版)(少年画報社文庫) [マーケットプレイス コミックセット] 備考 YKコミックス版2巻巻末に「快傑イーピン・ゴッド」(別冊近代麻雀89年10月号~11月号掲載)、3巻巻末に「闘え!! イーピン・ゴッデス」、7巻巻末に「快傑イーピン・ゴッドII」(別冊近代麻雀92年7月号掲載)、9巻巻末に「快傑イーピン・ゴッド~最終章~」を収録。 本編38・39話(YKコミックス版5巻収録)が麻雀回。この回以降、筒井一恵(上記読切「イーピン・ゴッド」の主人公・筒井征一の娘で、「イーピン・ゴッデス」では主役を務めている)が準レギュラーとして本編に登場するようになる。 本編99話(YKコミックス版11巻収録)も麻雀回。 80年代 90年代 YKコミックス ヤングキング 中津賢也 少年画報社文庫 短編集 近麻 麻雀回
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そして朝 当然の事ながら学院は大騒ぎになっていた 何せ宝物庫の壁を物理的に破壊して、以下のような犯行声明を大胆にも残していたのだから。 『破壊の杖、確かに領収致しました。土くれのフーケ』 「お前が悪い!」 「彼女が悪い!」 「あいつが悪い!」 「私が悪い!」 取り敢えず責任の擦り合いから始めている教師達。かなり混乱している。 それを尻目に問題の解決に悩む学園長のオスマン。 うーむうーむと唸り続ける。そこに、物凄いタイミングの良さで女性が現れた―――秘書兼オスマンのセクハラ相手のロングビルである。 悩むオスマンに、彼女は下手人フーケの居場所を掴んだ事を知らせた。 「農民に聞き込みを入れた所、フーケの居場所が分かりました! 破壊の杖と似た形状の筒を抱えて、黒ずくめのローブを着た男が、森の廃屋に入って行ったようです! そこがフーケの隠れ家だと思われます!」 そのロングビルの朗報に 「王室に報告を!衛士隊に頼んで、兵を向かわせなければ!」 そう言うU字禿に唾を飛ばして叫ぶオスマン。 「このU字禿が何を言うかッ!知らせている間に逃げられたらどうすんじゃッ!残っている髪も全部無くなってしまえッ! それにこれは、我が身の不始末じゃぞ!!自分達の不始末を他人に解決してもらってどうするのじゃッ!?」 そこで、一端言葉を切ると、先程とは打って変わった表情でニコヤカに話し合うオスマンとコルベール。 「しかし……それにしても学園長、宝物庫が破られたのを知ったのは何時でしたか?」 「今朝じゃのう」 「そしてミス・ロングビルがフーケの隠れ家を掴んだのは何時でしたか?」 「ついさっきじゃのう」 「数時間も経っていないのに、神出鬼没なフーケの居場所を聞き出す事が出来るなんて有り得るでしょうか?」 「普通はありえないのう」 「そうですよね……フーケ本人かその共犯者以外じゃなきゃ、普通は有り得ない事ですよね」 「まあ、ミス・ロングビルがフーケを超える程優秀だったんじゃよ」 「無理矢理、納得するとしたらそうですね」 そこでいきなりロングビルの方を向くオスマンとコルベール。 グルゥッ!と言う効果音が付きそうな程である。 「「ミス・ロングビルそんなに引き攣った顔をしてどうしたんじゃ」ですか?」 「は、はは、は」 ロングビルは引き攣った笑いを返すしかできなかった。 「では、捜索隊を編成する。我こそはと思う者、杖を掲げよ」 しかし、誰も杖を掲げなかった。明後日の方向を見ながら口笛を吹いている者さえ居る。 「情けないのう……フーケを捕えて、家の名を上げようと思う貴族は居らんのか?」 その時、突然物陰から出て来て、杖を掲げた貴族が居た。 「私がやります!」 教師たちの眼が一斉に――――ルイズに向いた、コルベールが声を上げる。 「聞いていたのかミス・ヴァリエール!? 生徒が出る幕では無いぞ!教師に任せて戻りなさい!」 「誰も杖を掲げてないじゃないですか」 ルイズはプンスカしながらも言い返す。そんなルイズを面白そうな顔で見つめているディアボロ。 ルイズが杖を掲げたのを見て、同じく物陰から出て来たキュルケも杖を掲げる。 「ヴァリエール家が行くなら私も行かないわけにはいきませんわ」 「ミス・ツェルプストー…君までか」 呆れた声を出すコルベール。 最後に物陰から出て来た――タバサも杖を掲げた。 「ふむ…。では、頼むとしようか」 そのオスマンの提案に、一人だけ反対する教師が居た。 「しかしですな学園長、ミス・タバサやミス・ツェルプストーはまだしも、ミス・ヴァリエールを行かせるのは危険すぎますぞ! ここはフーケの情報を一人だけで掴んだミス・ロングビルに行かせるべきだと私は愚考しますが?」 その教師、コルベールの顔を見たオスマンはゆっくりと喋る。 「この三人は間違い無く優秀じゃぞコルベール。ミス・ツェルプストーは相当の炎の使い手と聞いており ゲルマニアでも優秀な軍人を数多く輩出した名門の出じゃ」 「それは知っています」 (グダグダ喋ってないで、さっさと破壊の杖を奪還させに行けよ……) と、思う教師達の中、オスマンが次にタバサを見た。 「ミス・タバサは若くしてシュバリエの称号を持つ騎士と聞いておる」 「学園長……それも知っていますが」 しかし、驚いたのはキュルケ。 「え、え!?私聞いてないわよタバサ!」 「言ってない」 ルイズも驚いたようにタバサを見ていた。教師達は如何でもよさげだ。 ディアボロは適当にそれを聞いていた。 (シュバリエ?何だそれは?美味いのか?) 「ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女じゃ!」 その言葉にジト目でオスマンを睨むコルベール 「学園長…ミス・ヴァリエール本人はどうなんですか?」 「ムグ……ッ!」 (何とかして誉めてやったほうが良さそうじゃな……) そう考えたオスマンはディアボロを見て思い付いた言葉を口に出す。 「ミス・ヴァリエールは将来有望なメイジになる可能性が否定できないような気がしないでもないような感じがするような…… それにじゃ!ミス・ヴァリエールの使い魔は平民の変態ながらも、あのグラモン元帥の息子、女垂らしのギーシュ・ド・グラモンと決闘して勝ったそうじゃ!」 「確かにそうですな学園長。彼はガン……」 「ミスタ・コルベール!」 口を滑らしかけたコルベールを叱責したオスマン、当の本人は慌てて口に手を当てる。 オスマンとコルベールがチラリとトディアボロを見る、が。 「…………」 何処と無く呆けているような顔で立っているだけで心配はいらないと判断。 何か突っ込まれる前に、とっとと話を終わらせようと、オスマンは高らかに宣言する。 「とにかく!一人でフーケの居場所を探し当てたミス・ロングビルには劣るかもしれんが 彼女たち三人に勝てるものはおらんはずじゃ」 そして、四人に向き合うオスマン。 「諸君らの努力と貴族の義務に期待する」 「「「杖にかけて!」」」 女性三名が同時に唱和し、恭しく礼をする。 「では、馬車を用意しよう。ミス・ロングビル、彼女たちを手伝ってやっとくれ」 「了解いたしました学園長」 ミス・ロングビルは頭を下げた、が。 コルベールとオスマンの笑い声が聞こえて来た 「それにしてもフーケか共犯者じゃなきゃおかしいですなぁ」 「そうじゃのう、そうじゃのう」 顔を再度引き攣らせながらも、ロングビルはそそくさとその場を離れた。 「なー、あいぼー、フーケを捕まえられると思ってるのかー?」 出発までの僅かな時間に、ディアボロは厨房で料理をしこたま食らっていた。 特別に作ってもらった特大のピッツァを一秒で食べ切り一息突く。 「ふぅ……フーケが本当にその場所に居たら。の話だがな」 「馬で四時間って事は、往復で八時間って事だろ?腹は大丈夫なのかよ?」 「それを何とかするために、今食事しているんだが?」 料理を次々に平らげながら、先程U字禿が言い掛けた言葉を思い出すディアボロ。しかしそれにしても大食いってレベルじゃねーぞ (ガン何とかか……あの禿は何を言おうとしていたんだ?) あの時、ディアボロはただ黙って立っていただけでは無い。 目だけを動かして観察+耳で周囲の情報を聞いていたのだ。 (まあ、考えても詮無き事か) そんな事を考えながら、デルフリンガーを鞘に収め、コック長のマルトーに向かって歩き出す。 彼の目論見通りに、ギーシュとの決闘後、厨房の連中はディアボロの事を『我らの剣』と尊敬していた。 シエスタやコック長のマルトー等は一種の信者である。 歩いてきたディアボロの姿を見たマルトーは嬉しそうに叫ぶ 「おお!ディアボロじゃないか!何か用でもあんのかい?」 「馬車の中に食べ物を置いてもらえないだろうか?」 「おう!お安い御用さ!今度は貴族の泥棒を捕まえるんだって?頑張ってくれよ!」 土くれのフーケがどんな強さかはディアボロには分からないが。 取り敢えず餓死の危険性が少なくなった事にホッとした。 そして、重要な事を思い出したディアボロ (任務は『破壊の杖』奪還だったな・・・・・・マルトーにもう一枚DISCを預けて行くか) <<前話 目次 次話>>
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ディアボロの憤慨① 怒り浸透の俺に気付いてかキョン達は、そそくさどこかに行ってしまった アイツ等の言う事は俺への侮辱にあたる。ただの小娘がこの俺を同情で救いだした 確かに救いを望んだ。切望していた。懇願した。 だが、古泉の言うことが本当だとしたら一人の小娘が俺を操っているようじゃないか! そんなの俺のプライドが認めん!帝王の誇りが汚れる!! ふと頭上が暗くなった気がした。 見上げると数人の若者が汚らしい俺を見下している。 気にくわない……どいつもこいつも俺を見下す奴ばかりこれも全部あのジョルノのせいだ!! 「おい、おっさん金だせよ」「お金めぐんでー」「俺の体売ってあげるからーぁ」「ギャハハ!」 俺は帝王だぞ! スタンドなど出せないが、そんなのは関係ない!こんなクズどもには素手で十分だ! ベンチから立ち上がり正面に居る男の髪の毛を掴み、隣の男に向かってブン投げた。声をあげ地面に倒れこむ。 俺は攻撃でき、死ぬ回数も減った‥‥ハルヒが望んだから なら俺がこんな事をするのは、あいつが望んだこと……なら望みどおりにしてやろう。 「ぎゃあぁぁあっ!」 こいつの首をへし折って、お前が望む未来にしてやる凉宮ハルヒ!! to be continued...
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ディアボロの憂鬱④ 俺はこの古泉の家にいき、適度な食事と、適度な部屋が与えられた。 しかし‥‥明らかに一般市民の住む建物ては雰囲気が違った。 それにこの男、どうやらここには住んでいないようだ。俺は問い詰めると 「詳しくは明日話します」それだけ言った。 翌日、日曜日なので学校はないが ハルヒ以外の全員の面子が駅前に揃っている。あいつはハブられているのか? 「まさか、違いますよ」 古泉はそう言ったが、信用ならない‥‥ 大抵こんな笑顔をふりまく奴にろくなのは居ないって事を俺は知っているからだ。 だらだらと駅から歩き公園にたどり着く 「さて、どこから説明しましょうか?」 聞かれたキョンは知るかと投げやりに答える。 古泉は考えるふりをして、さも今思い付きましたとジェスチャーをとる。 「自己紹介からにしますかね。まずは僕からですね。古泉一樹超能力者です」 「長門有希。情報統合思念体に造られた対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース」 「あ、朝比奈みくるです‥‥未来から来ました」 「一般市民で普通の奴だ」 最後に仏頂面のキョンが本名を言わないで自己紹介を終えた。 とりあえず言っとかないといけない事がある 「イカれてるのか?」 「まぁ、そう言われるとは思いましたよ。 僕達は凉宮さんに呼ばれて来たんです僕の場合は超能力を得ました」 スタンドが有るぐらいだから、 まぁ、未来人も宇宙人も超能力者も信じよう。 俺も超能力にちかいからな‥‥だが、なぜそれを俺に言う必要がある? 「貴方も凉宮さんに呼ばれたからですよ」 古泉は即答した。こいつもハルヒと似ていて自信家らしい、 可能性ではなく絶対の根拠はなんなのか知りたいな 古泉は長々とハルヒの力を力説したがたちの悪い宗教者にしか思えなかった。 この歳で信者とは、こいつら相当のイカレポンチだな 「じゃあ、何で貴方はここに居るのですか?」 「‥‥え?」 「親友と娘さんを探しにここに?なんの根拠と確信を持って?」 「それは……勝手にここに来たんだ! 俺だって来たくて来たわけじゃない!あの小僧のせいだ!!」 俺は我を忘れて無様に怒鳴った。 周りには俺達以外にも人が居たが数人の少年たちだけが残り 他の奴らはそそくさと公園から出て行った……俺らしくも無い冷静になれ 「では、日本に来たのも初めて?」 「あぁ、そうだ」 「日本からイタリアへの直行便は約12時間。 日本との時差は8時間。日本が正午の場合イタリアは前日の午前4時です イタリアから一番近い国はスイス。」 「……それがどうした?」 「こんなに距離があるのにどうして日本なんでしょう? たとえランダムに選ばれたとしても、ランダムにだって規則性はあります。 だからおかしいんですよ。今までずっとイタリア圏内からいきなり日本に来るなんて」 続きが言えなかった。偶然流れ着いたと思っていたからだ でも言われてみたらそうだ。どうして日本に――? そして、古泉は言った 「貴方……死んでも生き返るんですよね? なら凉宮さんは貴方を呼んだのは、貴方を助けたいからですよ」 それは俺の望んだこと。 俺は、あのハルヒのおかげで孤独の死の連鎖を止められた? あいつがそう望んだから?確かに助けてもらいたかった。 でも同情などで助けてもらいたくない! あんな……あんな小娘にまで同情された!このディアボロが!! そんな運命なんか俺はごめんだ!!! 俺は忘れてしまったんだ。 大きな不幸に襲われ、ほんの少しの幸福を手に入れたから 誇りは命を縮めるということを to be continued...
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ディアボロ/組織のボス 「帝王はこのディアボロだ!依然変わりなく!」 襲撃 男 悪・覚 300/300 【瞬/必】 コイントスをして裏の場合、このカードの名前を『ドッピオ』攻/防を100/100に変更し、山札から『エピタフ』を手札に加える。 ドッピオ/組織のボス とぅるるるるるるる……とぅるるるるるる…… ……電話はボスに繋がらなかった…… 襲撃 男 悪・覚 100/100